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クラウド、IT、女性をめぐる本と思考の旅

源氏さん、やりすぎですよ――瀬戸内寂聴『源氏物語 巻1』

源氏物語 巻一 (講談社文庫)
瀬戸内 寂聴
講談社
売り上げランキング: 633
やたらと国語教育に熱心な女子高に通ったおかげで、古文大好きっ子だった私。当然源氏も大好き。『あさきゆめみし』にはだいぶお世話になりました。(でも枕草子はもっと好きだったりして)
わかりやすい現代語訳と評判の瀬戸内訳源氏が文庫になったと聞いて早速とりあえず1巻を読書。

半分文語が入ってる与謝野訳とかとくらべて確かに分かりやすくきれいな訳であることは間違いない。しかしそれにしても、現代語になるとより光源氏が身近な存在に思えるだけに、その女たらし加減がいささか目に余る。空蝉への迫りようはちょっとストーカー入ってるし、夜這いしてみたら目当ての人がいなくて、かわりにそこにいたその女の娘の処女をさっくりいただいてしまってます(娘を身代わりにして逃げる母親もどうかと思うが)。藤壺との関係はマザコンな上に不倫で子供までできてしまうし、紫の上にいたってはロリコンでかつほぼ誘拐だ。源氏、いたるところで自分の浮気の言い訳しまくってるし、相当強引。やりたい放題だな〜。

しかしこれも平均寿命40年の儚い命のなせる業?実はメインの登場人物のほとんどが10代、20代なんだよね。今の20代、30代がちょうど10年前にシフトした感覚でしょうか。

橋本治の『桃尻語訳・枕草子』じゃないけど、現代恋愛小説風に書き直したらかなり笑える小説になるんじゃないだろうか。和歌は絵文字つきメール、みたいな。

ちなみに巻1に収められているのは「桐壺」から「若紫」までの5帖だけど、いま現在世の中にあるラブストーリーの典型のうちかなりのパターンがすでに登場していることに、あらためで驚き。最後まで読んだら間違いなくすべての恋愛小説を網羅できるでしょう。